インバースはなぜ減価するのか
2016/12/23
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「インバースのETFは減価する」
聞かれたことがあると思います。
「価格が目減りしてるから長期で持つのはうまくないよ」とも。
「インバース(inverse)」逆の、反対のという意味です。
インバースETFは、対象とする指数の逆、-1%の値動き(ダブルインバース等の名称のものなら-2%)を目指すものです。
対象指数が10%上がればインバースETFは10%下がります。10%下がれば10%上がります。
何も減ってないじゃん。
減るんですよ、これが。1日目はいいのです。2日目からが問題です。
野村證券の1571解説動画
日本で最初に上場したインバースETFは、1571NEXT FUNDS日経インバース指数ETFです。
2012年4月。1570日経レバETFと揃っての上場でした。
この時、野村證券が作った解説動画があります。
減価する仕組みを説明してくれてるので、「減価の理由がサッパリだ」って人はこれを見てください。
ポイントは、
「2日以上離れた日」
「値動きが上昇下落を繰り返した場合」
この2点です。
ここに注意して見れば分かると思います。
(動画でピンとこない場合も、下で動画内で言っていることをシミュレーションしているので、それを読めば大丈夫です)
【NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信 動画(2012年12月7日掲載)
いかがでしょう?
減価は、
・2営業日以上離れた価格の間に起きる。
・価格が上げ下げを繰り返すと起きる。
ってことです。
ピンと来ない場合でも、実際やってみると分かります。
動画の中で日経が
スタート→翌日UP→翌々日DOWN した場合と
スタート→翌日DOWN→翌々日UP した場合は、説明されてました。
スタート→翌日UP→翌々日さらにUP
なのでここでは、
スタート→翌日UP→翌々日さらにUP のケースをシミュってみます。
今、日経10,000…だとなんか不吉な気持ちになるので、ここは思い切って今、日経100,000、インバースも100,000だったと仮定します。
スタート翌日、日経は100,000から110,000に上がりました。10%の上昇です。
インバースは、10%ダウンの
100,000+(-10%×100,000)=90,000 になります。
1日目は何もないですね。普通です。
翌日、日経は110,000からさらに10,000上げて120,000になりました。
この日の上昇は9.09%になります。
インバースは…
90,000+(-9.09%×90,000)=81,819
ん?これだと、日経が100,000→120,000と20%上がってるのにインバースは100,000→81,819で18.2%くらいしか下げてない。
インバースがプラスに働くこともあるんじゃん!
ええ、そう、そうなんですけどね…
さらにその翌日までやってみましょう。
翌日、日経は急降下して100,000に戻っちゃいました。
16.7%ダウンです。
これならインバース爆益!なはず
81,819+(+16.7%+81819)=95,483
日経はプラマイゼロなのにインバースは随分目減りして…
そう目減りです。それが減価です。
スタート→翌日DOWN→さらに翌日もDOWN
もうひとつ、スタート→翌日DOWN→さらに翌日もDOWN というインバースが光り輝くケースもやっておきます。
スタート日翌日、日経は100,000から10%下げて90,000になりました。
インバースは10%UPの110,000です。
次の日、日経はまた売られて11.1%下げの80,000になっちゃいました。
インバース君!檜舞台だ気張ってくれたまえ。
110,000+(+11.1%×110,000)=122,210
日経は20%の下げなのに、インバースは22.2%上げ!持っててよかったー。
で、さらに翌日
日経は10,000戻して90,000で引けました。この日12.5%の上げでした。
インバースは、
122,210+(-12.5%×122,210)=106,934
なんだ最初100,000だったんだから儲かってるじゃん!
はい。儲かってはいます。3営業日前に買ってここで売れば利益は出ます。
でも同期間の日経は100,000→90,000で、10%下がっています。
インバースのほうは、100,000→106,934と、6.93%に上げ幅が縮んでいます。
これが減価です。
※レバレッジETFの減価もシミュレーションしておきました。
5 付録 レバレッジはなぜ減価するのか
パーセンテージで調整されるETFの運命
上げ上げ上げ上げ、下げ下げ下げ下げと連続している時はいいのです。
むしろこの時は複利効果でおいしいです。
でも、そう連日上げ続ける指数も下げ続ける指数もなく、どこかで戻りが入ります。
この時、膨らんでいた利益をさっと掠め取られるのがインバース特性の減価です。
だから、長期では持つなと言われているわけです。
ここで挙げた例はよくよく極端なケースです。
現実の相場では、毎日10%も上下に動くようなことは滅多にないでしょう。
でも、これをぐっと小規模にした掠奪被害に年中遭っているのが1571日経インバースであり、XIVであり、XIVの日本版2049 VIXインバースなのです。
どうぞいたわってやって下さい。ってそういう話じゃなくて。
レバレッジ系のETFでも同じことが起きてます。
パーセンテージで調整するスタイルのETFはすべてこの運命を背負っています。
ここまで、インバース特性による減価について確認してきました。
次ではインバース銘柄であるXIVや2049 VIXインバースの価格がどう決まるのか、他の要因と合わせて見ていきます。
NEXT
XIV(2049)をめぐる増価と減価 増えてんのか減ってんのかハッキリしろ
付録 レバレッジはなぜ減価するのか
レバレッジETFが減価する仕組みは、インバースと同じです。
パーセンテージで調整すると減価するのです。
VIX関連商品にもレバレッジのかかったものがあります。
UVXY、TVIX(VIX先物短期の2倍)、TVIZ(VIX先物中期2倍)がそうです。
レバレッジ減価も、2営業日以上離れた期間に価格の上げ下げがあると発生します。
ちょっとこちらもシミュってみましょう。
スタートの日、日経100,000、レバレッジETFも100,000だったと仮定します。
翌日、日経は110,000に上がりました。10%アップです。
この時レバ2倍ETFは20%上がることになるので、
100,000+(+20%×100,000)=120,000になります。
さらにその翌日、今度は日経が10,000下がってスタート地点の値100,000に戻っちゃいました。
レバ2倍は、どうなるかと言いますと…
日経の110,000から100,000は、率にすると-9.09%です。
この時ETFは、2倍の18.18%下がることになり
120,000+(-18.18%×120,000)=98,184
原資産は、上げ下げの結果元の値に戻っただけですが、レバレッジ2倍のETFは、100,000から98,184に下がってしまいました。
これが減価です。